水彩「Stetson」のメイキングより。一目ではわかりにくい水彩技法のポイント
今回は、パッと見ただけではわかりにくい水彩の技法のポイントを解説します。
水彩は描くのも面白いのですが、絵の中で
「どんなことをやっているのか」「何を意図してやっているのか」がわかると
見ることもすごくたのしくなります。
「絵を見てわかってください!」なんてのもかっこいいのですが、
正直、「そういうことを言うから絵が難しく思われるんじゃないかなあ」と
いう気持ちもあったりしますので、こうした説明も時々していけたらと思います。
figure-drawingの現場からというコーナーですので、
これまでに描いたfigureを例にとってお話します。
水彩「Stetson」のメイキングより
たとえばこの絵、髪と帽子(ステットソン)のところだけでも
これだけのことを考えて描いています。
ここでは顔の真ん中を基準にして、向かって右側(ロゴのあるほう)を右サイド、
向かって左側を左サイドと表記します。
(帽子をナナメにかぶっているのと、少し角度のついた写真なので、
真ん中はだいたいの感覚でみてください)
右サイドは、左サイドに比べて光の影響を受けていると考えて描いています。
今回は、髪と帽子の解説ですので、顔の部分だけ隠して見ていただくと
わかりやすいかと思います(顔があると、そこに目がいっちゃいますので 笑)。
【右サイドの髪と帽子】
こちらは明るい側ですから、左サイドと差をつけるようにします。
・帽子と髪をほんのりと同化させる(が、完全に別物として描かない)
・帽子のつばのカゲは、帽子本体との差をつける
・帽子のつばの部分や髪の右サイドは、筆あとやかすれを出しラフな感じを出す
・明るいほうの髪の中にも暗い部分をつくる(が、左サイドと差があるように)
【左サイドの髪と帽子】
こちらは暗い側です。
・帽子と髪をほぼ同化させる(が、完全に同化させない)
・帽子のカゲ側の部分は、暗い中にも明るさの変化を出すようにする
・髪の右側と左側の明るさの違い
【帽子全体】
・帽子のバンド部分がほんのりと見えるように(が、はっきりと見せない)
・白い部分を残すことで、タッチのラフ感とfigureのワイルド感を出す
・白い部分を残すことで、全体のアクセントとひきをつくる
【髪と帽子全体】
・髪と帽子は、それぞれ違うにじませ方をする(大きく差をつけすぎないこと)
・ワイルドな感じを出すために、強くてワイルドににじんだ部分をつくる
……と、まあ、ほんの一例ですが、こんなことを考えながら塗っています。
(実際はもっといろいろ考えています)
ほぼ一発でこの状態に持っていきます
ちなみに、この絵では乾いてから塗り重ねるということをせず、
ほぼ一発でこの状態をつくっています。
そう、figure-drawingは、こうみえても、水彩技法的に
けっこうおもしろいことをやっているのです(笑)。
パズル感覚で水彩メイキング
水彩は、「考えていることをどう出すか」という点もたのしいところです。
塗り重ねるのか、一発で出すのか、色で出すのかなど、
いちばんいい雰囲気になりそうなものをチョイスしていく、
ちょっぴりパズルのような感覚でもあったりします。
スポーツをやらない人でも、監督やコーチ、選手の考えがわかってくると
観戦するのがよりたのしくなってくるように、
絵もプレイヤー側(描く側)の感覚をちょっとだけ知っておくと
見ることがすごくたのしくなってくると思います。
【関連記事】水彩「SMILE」のメイキングより
【関連リンク】figure-drawingについて なぜこのスタイルなのか
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